移動平均線は、相場の動きを一つの流れとして捉えることができる、最もポピュラーなテクニカル分析の一つです。そのため、様々な種類の移動平均線が開発されています。
 
各移動平均線にはどれも一長一短があり、一つの移動平均線に統一して使用すると良いというものでもありません。分析に利用したい状況や手法に合わせて、適切な移動平均線を利用しましょう。

移動平均線について

移動平均線の標準値

移動平均線は、計算に使用する「価格の種類」と「期間」を設定することができます。
 
基本的に終値を計算に使用するトレーダーが多いですが、始値や高値、安値、中央値{(高値+安値) / 2}、代表値{(高値+安値+終値) / 3}、加重終値{(高値+安値+終値*2) / 4}なども計算に使用することができます。
 
期間は様々な期間を設定することができますが、5、10、13、15、20、21、25、26、45、50、75、89、100、200などが多く設定されています。
 
特に多いのが21日線と89日線や、25日線と75日線といった過去の値動きとの相性が良い数値を好むトレーダーが多いです。
 
特に21日線と89日線はフィボナッチ数列に含まれるフィボナッチ数で、フィボナッチ数列に含まれる数を好むトレーダーも多いです。
 

移動平均線の読み方

移動平均線は、トレンドと勢いを読み取ることができます。
 
価格が移動平均線よりも上にある場合は上昇トレンドが発生しており、価格が移動平均線よりも下にある場合は下落トレンドが発生していると考えられます。
 
移動平均線の向きが上向きの時は強気(勢いがある)の相場、横ばいの場合は方向感のないレンジ相場、下向きの時は弱気(勢いのない)な相場と考えられます。
 

移動平均線の利用方法

移動平均線は、価格と1本の移動平均線を利用して分析する方法や、複数の移動平均線を利用して分析する方法があります。
 

価格と1本の移動平均線を利用する(グランビルの法則)

グランビルの法則は、ジョセフ=グランビル氏が考案した法則です。移動平均線と価格の位置関係から、売買のタイミングを判断することができる法則です。
 

買いの局面
  • 上向きになりつつある移動平均線を、価格が下から上に抜けた時
  • 上昇中の移動平均線を価格が下回った後、再度上回った時
  • 上昇中の移動平均線の上に価格がある状態で、移動平均線に向かって価格が下降するものの、下回らずに平均線の手前で反発して価格が上昇した時
  • 価格が下降中の移動平均線から大きく下方乖離した時

グランビルの法則:買いの局面(価格がMAを上抜く・反発)グランビルの法則:買いの局面(上昇中のMAを価格が下回り、再度上回る)
 

売りの局面
  • 下向きになりつつある移動平均線を、価格が上から下に抜けた時
  • 下降中の移動平均線を価格が上回った後、再度下回った時
  • 下降中の移動平均線の下に価格がある状態で、移動平均線に向かって上昇するものの、平均線を上回らずに再び下降した時
  • 上昇中の移動平均線から、価格が大きく上方乖離した時

グランビルの法則:売りの局面(上昇中の移動平均線から、価格が大きく上方乖離した時)
 

移動平均線を2本利用する

期間の異なる移動平均線を2本利用することで、売買タイミングを判断することができます。
 

買いの局面

短期の移動平均線が中期の移動平均線を下から上へとクロスした時(ゴールデンクロス)
移動平均線:ゴールデンクロス
 

売りの局面

短期の移動平均線が中期の移動平均線を上から下へとクロスした時(デッドクロス)
移動平均線:デッドクロス
 

移動平均線を3本利用する

期間の異なる移動平均線を3本利用することで、「パーフェクトオーダー」というテクニカル分析手法の一つを利用することができます。
 
パーフェクトオーダーに利用する移動平均線は、25日、75日、200日などの組み合わせが多く利用されます。
 

上昇トレンドのパーフェクトオーダー
  • 上から短期線→中期線→長期線の順に移動平均線が並び、3本とも上向きである時

 
3本の移動平均線の角度が強いほど、トレンドの勢いが強いと考えられます。
移動平均線:パーフェクトオーダー(買いの局面)
 

下降トレンドのパーフェクトオーダー
  • 上から長期線→中期線→短期線の順に移動平均線が並び、3本とも下向きである時

 
3本の移動平均線の角度が強いほど、トレンドの勢いが強いと考えられます。
移動平均線:パーフェクトオーダー(売りの局面)

移動平均線の種類

移動平均線はかなりたくさんの種類があります。このページで紹介する移動平均線以外にも開発されている移動平均線はありますが、このページではよく利用されている移動平均線を中心にご紹介します。
 

  • 単純移動平均線(SMA)
  • 加重移動平均線(WMA)
  • 修正移動平均線(MMA)
  • 指数平滑移動平均線(EMA)
  • 適応型移動平均線(AMA)
  • 複合型移動平均線(GMMA)

単純移動平均線(SMA)

単純移動平均線
単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)は、一定期間の平均価格をグラフにした移動平均線です。移動平均線の中では、最もポピュラーで基本的な移動平均線と言えるでしょう。
 
相場を直接追うよりも価格の動きが滑らかになるので、相場の流れを把握しやすくなります。
 

単純移動平均線の計算式

条件式(n日間単純移動平均線とする)
 
計算式当日のSMA = n日間の価格合計 / n

加重移動平均線(WMA)

加重移動平均線
加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)は、線形加重移動平均線(LWMA:Linear Weighter Moving Average)とも呼ばれる移動平均線です。
 
単純移動平均線よりも直近の価格に比重を置いています。比重の置き方は、直近の価格に徐々に比重を置いていきます。そのため、緩やかな上昇相場や下降相場に威力を発揮する移動平均線です。
 
ただし、単純移動平均線よりもダマシが多くなり、特に大きな価格変動のある局面やレンジ相場は加重移動平均線にとって苦手な局面と言えます。
 

加重移動平均線の計算式

条件式(n日間単純移動平均線とする)
 
計算式当日のWMA = [(当日の終値 × n) + {前日の終値 × (n - 1)} + {前々日の終値 × (n - 2)} + …… + {(n - 2)日前の終値 × 2} + (n - 1)日前の終値] / {(n + (n - 1) + (n - 2) + …… + 2 + 1)}

修正移動平均線(MMA)

修正移動平均線
修正移動平均線(MMA:Modified Moving Average)は、Running Moving Average(RMA)や平滑移動平均線(SMMA:Smoothed Moving Average)とも呼ばれる、指数移動平均線(EMA:Exponential Moving Average)の一種です。
 
単純移動平均線は一定期間(n日)の価格を合計して平均します。n日より過去の終値は計算に含まれません。
 
そのため、前日の終値より当日の終値が高い場合でも、計算から外れるn日前の終値よりも当日の終値が安いと、単純移動平均線は下がってしまいます。つまり、単純移動平均線は直近の値動きに対する反応が鈍いと言えます。
 
修正移動平均線では、前日の修正移動平均値と当日終値から当日の修正移動平均値を計算します。
 
そのため、単純移動平均線の難点である「前日終値よりも当日終値の方が高いのに移動平均線が下がる」という現象は起こりません。
 
また、前日の修正移動平均値を繰り返し計算に使用することで、n日前の終値が含まれ続けます。そのため、単純移動平均線より滑らかな移動平均線になります。
 

修正移動平均線の計算式

条件式(n日間単純移動平均線とする)
 
計算式当日のMMA = (前日のMMA × (n - 1) + 当日の終値) / n
 
また、指数平滑化定数をSCとすると、このようにも置き換えることができます。
 
SC計算式SC = 1 / n
 
SC計算式当日のMMA = 前日のEMA × (1 - SC) + 当日の終値 × SC
 
※1日目の「前日のMMA」はn日間終値の平均値(n日単純移動平均値)とする。

指数移動平均線(EMA)

指数移動平均線
指数移動平均線(EMA:Exponential Moving Average)は、指数平滑移動平均線とも呼ばれる移動平均線で、加重移動平均線(WMA)の一種です。
 
平滑移動平均線(SMMA)と呼ばれることもあります。修正移動平均線も平滑移動平均線と呼ばれることがあるので、調べる際は混同しやすいので注意が必要です。
 
指数移動平均線は、前日の指数移動平均値を計算に用います。そのため、n日より前の終値も計算に含まれ続けることとなり、単純移動平均線よりも滑らかな移動平均線になります。
 
計算式はほぼ修正移動平均線と同じなのですが、指数移動平均線は修正移動平均線よりも当日終値に比重を置いています。そのため、指数移動平均線は修正移動平均線よりも直近の値動きに対する反応が速いです。ただし、ダマシも多くなります。
 
MACDやTRIXなどに用いられる重要な移動平均線です。ダマシが多いですが、テクニカルで求められる平均値の姿を上手く描くことが多いため、他のテクニカル分析の計算に多く使用されています。
 

指数移動平均線の計算式

条件式(n日間単純移動平均線とする)
 
計算式当日のEMA = (前日のEMA × (n - 1) + 当日の終値 × 2) / (n + 1)
 
また、指数平滑化定数をSCとすると、このようにも置き換えることができます。
 
SC計算式SC = 2 / (n + 1)
 
計算式当日のEMA = 前日のEMA × (1 - SC) + 当日の終値 × SC
 
※1日目の「前日のMMA」はn日間終値の平均値(n日単純移動平均値)とする。

適応型移動平均線(AMA)

適応型移動平均線
適応型移動平均線(AMA:Adaptive Moving Average)は、Perry Kaufman氏が考案した移動平均線です。そのため、KAMAと記述されることもあります。
 
適応型移動平均線は、ノイズが少ない移動平均線で、トレンドの形成に素早い反応を示します。
 
適応型移動平均線は、効率比という数値を用い、さらに新しい平滑化定数を利用します。また、前日の適応型移動平均値を用いるので、n日前の価格が含まれ続けます。価格は、終値を使用することが多いです。
 

適応型移動平均線の計算式

条件式(n日間適応型移動平均線とする)
 
ER = 効率比。
 
Signal = シグナルの値。現在の価格とn本前の価格差の絶対値。
 
Noise = ノイズの値。現在の価格とn本前の価格差の絶対値合計。
 
SC = 平滑化定数。
 
高速SC = 値動きの速い相場における平滑定数。
 
低速SC = トレンドがない相場の平滑定数。
 
SSC = 新しい平滑化定数。Scaled Smoothing Constant
 
Signal計算式当日のSignal = (当日の価格 - n日前の価格)の絶対値
 
Noise計算式当日のNoise = (当日の価格 - n日前の価格)絶対値のn日間合計
 
ER計算式当日のER = 当日のSignal / 当日のNoise
 
SC計算式SC = 2 / (n + 1)
 
高速SCは、SCを用いて計算します。通常は2を代入しますが、相場の状況やトレーダーの利用方法に応じて調整が可能です。低速SCも、SCを用いて計算します。通常は30を代入しますが、こちらも高速SC同様調整可能です。
 
SSC計算式当日のSSC = (当日のER × (高速SC - 低速SC)) + 低速SC
 
SSC(平滑化定数)をより効率的にするために、Kaufman氏はSSC(平滑化定数)を2乗することを推奨しています。
 
計算式当日のAMA = 当日の価格 × 当日のSSCの2乗 + 前日のAMA × (1 - 当日のSSCの2乗)
 
または、このようにも置き換えることができます。
 
計算式当日のAMA = 前日のAMA + 当日のSSCの2乗 × (当日の価格 - 前日のAMA)

複合型移動平均線(GMMA)

複合型移動平均線
複合型移動平均線(GMMA:Guppy Multi Moving Average)はDaryl Guppy氏が開発した移動平均線です。特別な計算は必要ではなく、12本の指数移動平均線(EMA)を表示して、トレンド形成の有無やトレンドの勢いなどをビジュアル化する移動平均線です。
 
期間が異なる6本の短期指数移動平均線と、同じく期間が異なる6本の長期指数移動平均線を利用します。
 
短期線の期間は3、5、8、10、12、15の指数移動平均線で、長期線は30、35、40、45、50、60を利用します。短期線の色はブルーに統一し、長期線の色はピンクに統一しています。これにより短期線と長期線の見分けがつきやすくなっています。
 
パーフェクトオーダーのように、長期線グループと短期線グループがともに上向きで、かつ期間が上から短い→長い期間の移動平均線が並んでいる場合、上昇トレンドが発生していると考えられます。
 
逆に長期線グループと短期線グループがともに下向きで、かつ期間が上から長い→短い期間の移動平均線が並んでいた場合、下降トレンドが発生していると考えられます。
 
2つのグループ内部のライン間の幅が広い時、強いトレンドであると判断することができます。また、2つのグループ同士が大きく離れている時は、トレンドが強い(長く継続している)と考えることができます。
 
グループの束が同時期に収束した場合、トレンド転換の可能性が高いと考えることができます。
 
また、短期線のグループ(束)が長期線のグループ(束)に押し戻されたとき、長期線のグループが収束していない場合があります。この場合は、押し戻された短期戦のグループが元のトレンドに復帰する可能性が高く、押し目買いや戻り売りのタイミングととらえることができます。

移動平均線の注意点

移動平均線は、トレンド系に分類されるテクニカル分析です。トレンド形成の有無や勢いを判断することができる上、パーフェクトオーダーなどの移動平均線だけで完結するテクニカル分析手法も存在しています。
 
移動平均線以外のテクニカル分析にも言えることですが、移動平均線単体での使用は避け、その他のテクニカル分析を併用して判断しましょう。グランビルの法則やパーフェクトオーダー等のサインが出ても、相場の状況によっては価格の動きがサイン通りの動きにならないことも少なくありません。
 
また、移動平均線は一定期間における過去の値動きをもとに計算された指標です。そのため、指標発表やその他の事象による相場の急な乱降下が発生した場合にはサインの信頼性は低くなると言えるでしょう。

移動平均線と相性の良いテクニカル分析

移動平均線はトレンド系のテクニカル分析です。同じトレンド系のテクニカル分析と相性が良いと言えます。
 
トレンド系のテクニカル分析には、以下のようなテクニカル分析があります。
 

ATR、MA、HighLowチャネル、アルーンインジケーター、ケルトナーチャネル、MACD、ボラティリティ、一目均衡表、モメンタム等

移動平均線 まとめ

移動平均線はトレンドが形成されているのかや形成されているトレンドの方向性、強さ(勢い)を判断できるテクニカル分析です。期間の異なる移動平均線を複数利用することでより精度の高いテクニカル分析を行えます。
 
さらに、移動平均線には種類があり、トレーダーの目的に合った移動平均線を利用することでより精度の高い分析を行うことができます。
 
分析に利用したい状況や手法に合わせて、威力を発揮する移動平均線を選びましょう。

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