
ECBとは何か、という基礎的なことからECBの金融政策の歴史について簡潔にご説明します。
ECBとは
世界で2番目に流通している通貨ユーロですが、ECB(欧州中央銀行)はこのユーロに関する金融政策を行うことになっています。この点について、やや詳しくご説明します。
ユーロやECBが誕生するきっかけとなったのは、1992年に調印され1993年に発効したマーストリヒト条約です。この条約では、ユーロを導入することに加え、そのユーロの金融政策を担うECBの組織や機能についても規定されています。
ECBの最大の使命は「物価の安定」となっています。
というのは、ヨーロッパの歴史上、特にドイツがハイパーインフレを経験したことによって政情が不安定になり、第二次世界大戦が起こってしまったという「トラウマ」があるからです。
また、物価が安定することによって域内の各国は経済成長をすることができ、雇用を創出することができると認識されています。
次に、ECBの組織についてご説明します。
ECBの組織のうちで最も重要なのは「政策理事会」であり、ECBの最高意思決定機関となっています。これは、ECB総裁及び副総裁を含む役員理事会の6名と、ユーロ圏加盟国の中央銀行総裁で構成されています。
政策理事会では、政策金利の決定をはじめとする金融政策が発表されるため、発表時刻にはユーロ相場は大きく変動しますので注意が必要です。
また、主要な金融政策発表直後にECB総裁の記者会見も行われ、ここにおいて新たな金融政策が発表されることもあるので見逃さないようにしましょう。
ドラギECB総裁について
現在のECB総裁は3代目であり、マリオ・ドラギ氏が2011年11月よりその職についています。
過去にはゴールドマン・サックス証券の副会長や、イタリア銀行総裁を務めていたこともあります。
ドラギ総裁の特徴は、市場との対話を重視し市場から信頼されることにあります。
例えば、下記で詳しくご説明する猟奇緩和政策についても実施の半年以上前からその内容を示唆するなど、市場に量的緩和によるユーロ安を織り込ませようと尽力していました。
ただ市場との対話はドラギ総裁にとっても困難なことがあるようで、たまに市場にサプライズを与えてしまうことがあります。
その際には、ユーロは当初予想されていた方向とは逆方向に激しく変動することがあるため、ドラギ総裁の発言内容はしっかりとチェックし、臨機応変に対応できるようになっておきましょう。
ECBの金融政策の歴史
①ECB史上初の量的緩和
2014年や2015年の欧州ではデフレが進行していました。
上記の通りECBの使命は物価の安定にあるため、まずは2014年6月にマイナス金利を導入しました。しかし、物価を押し上げる力は弱く、次の一手として量的緩和が必要だとささやかれるようになりました。
ドラギ総裁も上記のように、量的緩和について言及し始めたことでユーロ相場は大きく下落を始めます。
そして、2015年の1月に史上初の量的緩和の実施を決定しました。
②金融緩和の縮小へ
2017年12月現在は、ヨーロッパの景気は回復傾向に向かっています。
そのため、ECBの量的緩和政策は縮小方向に向かうとみられています。
量的緩和の縮小と並んで、噂になっているのはECBの利上げです。
アメリカはすでに利上げプロセスを開始しており、それにいつ追従するのかが注目されており、市場はECBによる金融引き締めを織り込んですでに上昇を始めています。
ECBに関する注意点
ECB関連で注意すべきなのは、毎回の政策金利の発表とその後行われるドラギ総裁の記者会見です。とりわけ、ECBの場合総裁の記者会見で何か新しいことが示唆されるのではという期待感があるため、総裁の記者会見時には大きな値動きとなることがあります。
まとめ
ECBの金融政策はユーロ全体に影響を与えます。ユーロを取引される場合には必ず上記のことを念頭に置いておきましょう。